人体科学会第26回大会の開催にあたり

 大会会長  棚次 正和    
(京都府立医科大学 名誉教授)

大会テーマ「医学・医療を哲学する ー いのちの根源を見据えて」

 今年度の第26回大会は、12月3日(土)・4日(日)の二日間にわたって京都の「稲盛記念会館」(三大学教養教育共同化施設/京都府立医科大学)で開催いたします。大会会長として一言、御挨拶を申し上げます。本大会の企画・運営の中核を担っているのは、人体科学会サロンとして活動している「いのちの医療哲学研究会」のメンバーであり、今回は研究会による大会開催のモデルケースになるかもしれないと考えております。

 十二年間、京都府立医科大学で哲学思想系の教育・研究に携わってきた経験と、二年半ほど前に発足した「いのちの医療哲学研究会」の活動を通して、医学・看護学教育や医療における重要な問題を根本から捉え直す必要性を痛感してまいりました。そこで、大会テーマを「医学・医療を哲学する─いのちの根源を見据えて─」と設定いたしました。医学・看護学教育には複雑多岐にわたる診療分野・専門領域を一つに纏める扇の要の役割となる科目「医学原論」「看護学原論」がないという事実を、ご存じでしょうか。病気、健康、治癒の原理など、医療における最重要問題が、生命の原理にまで遡って捉えられてはおらず、ただ可視化しうる物理化学的現象面でのみ考察されているのです。このような生命現象の可視的次元への還元や集中傾向は、医療制度や医療行政という社会システムの問題以外に、現行の医学・看護学教育における自然科学優位と人文・社会科学軽視、短期間で成果を求める医学研究の風潮など、様々な要因が絡み合った結果であると推察されます。しかし、最も大きな要因は、生きとし生けるもの全てを貫いている生命固有の働きを私たち自身が(患者も医療従事者も)、必ずしもしっかりと自覚的には感得していないということではないかと思われます。いのちの根源に眼差しが注がれていないのです。したがって、いま私たちに求められているのは、生命の原理を探究する「哲学の復活」であり、「生命観・人間観の抜本的な刷新」です。

 そうした第一歩を踏み出すための大会企画として、医学・医療(看護を含む)を理論的に根本から問い直す「シンポジウム」と、新たな発想や原理に基づく未来医療の先駆的実践を紹介する「ワークショップ」を行なう予定です。また、一般向けの「公開講演」ではサブタイトル「いのちの根源を見据えて」に焦点を合わせ、真・善・美の三大分野を代表して、科学者の村上和雄先生、医師の中島健二先生、芸術家の松生歩先生より、自由自在にいのちの根源について御話ししていただきます。 晩秋の京都北山に皆様方を御迎えできることを心より楽しみにしております。会場隣りの府立植物園にはまだ紅葉が残っていることでしょう。どうか奮って御参加くださいますよう御案内を申し上げます。

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